【砂漠の宝石】 デザートアイアンウッド

デザートアイアンウッド

データ
学名Olneya tesota
別名
分類広葉樹
科・属マメオルネイア
原産国極めて硬い
気乾比重アメリカ、メキシコ
強度1.20
ヤンカ硬度
レッドリスト非絶滅

心材はオレンジがかった黄色から濃い赤または茶色をしています。一部、濃い紫色から黒が見られることがあります。部位によってはほぼ完全に黒色。辺材は淡い黄色で、心材とはっきりと区別されます。

木材は極めて硬くて密度が高いため、耐久性に優れています。

加工時、特に高温下で非常に強い刺激臭がします。
近いのは不快な磯(いそ)の匂い。常温では無臭。
英語圏では『朝の悪い息のような匂い』と表現されています。

概要

ソノラ砂漠の生態系と砂漠の古木

ソノラ砂漠の美しい夕日

アメリカ南西部とメキシコ北西部に広がる広大な砂漠地帯、ソノラ砂漠
日中は灼熱の太陽が照りつけ、夜は凍える寒さが訪れる過酷な環境です。

この厳しい気候の中で、多様な植物と動物が独特の生態系を形成しています。


ソノラ砂漠の固有種であるデザートアイアンウッドはこの土地の生態系にとって重要な役割を担っており、野鳥や昆虫に食料や避難所を提供し、花はハチドリや蝶にとって重要な蜜の源です。


また、木の種子は多くの小動物や鳥にとって貴重な食料源となっています。

また、他のマメ科植物と同様に、その樹冠(樹木の上部、枝や葉の集まった部分)の下の土壌を変え、窒素などの栄養素を豊かにします。


この木は他の砂漠の木々とは異なり、年間を通してほとんど葉を落とさず、樹冠は日陰を提供し、霜や極端な暑さから保護します。

サボテンの種子が凍結する夜においても樹冠の下は周囲より暖かくなり、サボテンの苗木にとって重要な場所を作ります。

800年以上生きると推定されるデザートアイアンウッドはソノラ砂漠の生態系において中心的な役割を担っており、その重要性は計り知れません。

デザートアイアンウッドとセリ族の伝統

デザートアイアンウッドはソノラ砂漠の象徴的な存在で、その硬さと高密度から先住民族、特にセリ族にとって伝統的な彫刻の材料として長年重宝されてきました。

彼らはこの木を用いて地元の動物を表現した独特の彫刻を作成し、文化的表現と生計の手段として利用しています。


乾燥した環境下でゆっくり成長するデザートアイアンウッドは、他の木材を圧倒するほどの硬さと豊かな黄金色を持ち、美しい作品の数々が生まれています。

加工の難しさも魅力の一つ?ナイフハンドルの究極の木材

デザートアイアンウッドは、ナイフのハンドル材料として高く評価されています。

その理由は、その圧倒的な硬度と密度にあります。水に沈むほど密度が高く、砂漠の気候によって硬質化したこの素材の堅牢さは、木材より鉱物に近い。


オレンジから黄金色、濃紫や黒い筋が特徴的な色合いで、美しい自然光沢と細やかな質感があります。加工は困難ですが、磨き上げると非常に滑らかで、極めて優れた安定性を持ちます。

ただし、作業時の粉塵は皮膚や呼吸器に刺激を与える可能性があるため、保護具の使用が推奨されています。また、工具の摩耗が激しく、製作には丁寧な取り扱いと忍耐が必要です。機能的で美しい外観と加工の難易度により特別な価値を持つ銘木です。

豪華絢爛な黄金の杢
Photo by kinmokusei
ペンと見事なバイソンの彫刻
Photo by kinmokusei
堅牢さを活かした特製の印鑑
Photo by kinmokusei
ペンと素晴らしいカッターナイフ
Photo by kinmokusei
木象嵌の作品
Photo by kinmokusei
名工Flamberg氏の作品
Photo by kinmokusei
ソノラ砂漠
Photo by punxyboy51
ソノラ砂漠の美しい夕暮れ
Photo by rauschenberger
個体数が減っているメキシコオオカミ
ソノラ砂漠に生息している絶滅危惧種
Photo by MikeGoad

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この記事を書いた人

齋藤 翼のアバター 齋藤 翼 木工家

独学で技術を磨いた木工家。
培った知識と経験をもとに、銘木や製作のノウハウをわかりやすくお伝えします。

木軸ペン工房 金杢犀の代表
本と映画とアンティーク家具が好き